🎄ストラスブールの輝き──ブロリー広場で出会う伝統のクリスマスマーケット
冬の訪れとともに、アルザス地方の街・ストラスブールは光に包まれる。
「クリスマスの首都 Capitale de Noël」と呼ばれるこの街では、11月末から街中が幻想的な雰囲気に包まれ、特に**ブロリー広場(Place Broglie)**に立つクリスマスマーケットは、16世紀から続くヨーロッパ最古のひとつとして知られている。

✨ブロリー広場に息づく伝統の温もり
広場の入り口をくぐると、木組みの屋台が整然と並び、温かな光が雪の粒を照らす。
ホットワインの香り、焼き栗の甘い匂い、遠くから響く聖歌隊の歌声。
訪れる人々は皆、どこか懐かしさを胸に、冬の夜をゆっくりと歩いていく。
この広場には、地元の職人たちが手がけた木製の玩具やリース、繊細なガラス細工が所狭しと並ぶ。
中でも、目を引くのがきらびやかなクリスマスボール(boule de Noël)。
ストラスブールの冬を象徴する、光の宝石のような存在だ。
🎁ガラスの輝き──クリスマスボールのはじまり
もともとクリスマスツリーの飾りには「リンゴ」が使われていた。
16世紀のアルザス地方では、冬に実る赤い果実が「エデンの園の実」として神聖視されていたのだ。
しかし、1858年、極端な凶作によりリンゴが手に入らなくなった。
そこで登場したのが、ガラス職人たちの知恵。
アルザス地方のガラス工房が、リンゴの代わりに吹きガラスで赤い玉飾りを作り出した。
これが、今日のクリスマスボールの原型とされている。
やがてその美しさはヨーロッパ全土に広まり、ドイツやフランスを経て、19世紀末にはアメリカへも渡った。
いまでは世界中で愛される、クリスマスツリーを彩る欠かせない存在となっている。
🌟光に包まれる瞬間
ブロリー広場の中心には、高さ30メートルを超える巨大なツリーが立ち、無数のボールオーナメントが星屑のように輝く。
その光を見上げると、まるで時が止まったように感じられる。
隣には、恋人たちがホットワインを片手に微笑み合い、子どもたちは雪を掬いながら笑い声をあげている。
「クリスマスの原点は、分かち合う心にある」
そんなメッセージが、この街全体から静かに伝わってくる。
🕯️旅の余韻
夜のブロリー広場を後にしながら、私はそっとポケットの中の小さなガラスのボールを握りしめた。
光を閉じ込めたようなその球体には、職人たちの想いと、冬の温もりが宿っている。
ストラスブールのクリスマスマーケットは、単なる観光名所ではなく、
「心の灯り」をもう一度見つめ直すための場所なのだ。


